
はじめに
サッカーのルールの中で最も理解しづらいと言われるのが「オフサイド」です。オフサイドを知らないと試合観戦中に突然プレーが止まる理由がわからず、サッカーの醍醐味を十分に味わえません。 この記事では、サッカー初心者の方でも一読すればすぐに理解できるよう、オフサイドルールを図解と共にわかりやすく解説します。
1. サッカー観戦が10倍楽しくなる!オフサイドの基本概念
「オフサイド」を理解することでサッカーの面白さは格段に増します!まずは基本概念から見ていきましょう。
1-1. オフサイドルールが存在する理由と歴史的背景
オフサイドルールは「フェアなゲーム」を実現するために生まれました。このルールがなければ、攻撃側の選手がゴール前に常に待機し、簡単にゴールを決められてしまいます。
サッカーが19世紀のイギリスで近代スポーツとして整備されていく過程で、ゲームバランスを保つためにオフサイドルールが導入されました。当初はラグビーに近いルールでしたが、徐々に変更され現在の形になりました。
公平性を保つために設けられたオフサイドは、攻撃と守備のバランスを取る上で不可欠なルールとなっています。
1-2. 「待ち伏せ禁止」というシンプルな考え方
オフサイドを最もシンプルに説明すると「待ち伏せ禁止」のルールです。ゴール前に攻撃側の選手が待ち構えて、ロングパスを受けて簡単にシュートするような「待ち伏せ戦術」を防ぐためのルールといえます。
この「待ち伏せ禁止」という考え方を理解するだけで、オフサイドの本質が見えてきます。サッカーでは攻撃側がボールを運びながら前進し、守備側と正々堂々と戦うことが求められているのです。
1-3. サッカー競技規則第11条の正確な解釈
国際サッカー評議会(IFAB)のサッカー競技規則第11条には、オフサイドについて次のように定められています:
選手がオフサイドポジションにいる状態で、次の条件を満たすとオフサイドの反則となります。
- 頭、胴体、または足の一部が相手競技者のハーフ内にある(ハーフウェーラインを除く)
- 頭、胴体、または足の一部が、ボールおよび後方から2人目の相手競技者より相手ゴールラインに近い位置にある
- その後、味方からのパスを受ける、またはプレーに直接関与する
この競技規則の正確な理解が、オフサイドを判断する基準となります。しかし言葉だけでは理解しづらいため、次の章で図を使って詳しく解説していきます。
2. 図解でマスター!オフサイドの判定基準
文章だけでオフサイドを理解するのは難しいものです。実際の試合状況を図解で見ていきましょう。
2-1. オフサイドラインとは何か?GKと最終守備者の関係
オフサイドラインとは、攻撃側から見て守備側の「後方から2人目の選手」の位置を通る、フィールドを横切る仮想的なラインです。通常、このラインは最終ラインのディフェンダー(DF)の位置になります。
守備側の選手の配置は以下のようになっています。
- ゴールキーパー(GK):最後尾に位置
- ディフェンダー(DF):GKの前に位置
重要なのは「2人目」というポイントです。通常はGKが最後尾、DFが2番目にいますが、状況によってはGKが前に出ることもあります。その場合は別のDF選手が「後方から2人目」になることもあるのです。
2-2. パスが出される「瞬間」の重要性
オフサイドの判定において最も重要なのは、味方選手がボールを「蹴った瞬間」の位置関係です。パスが出される瞬間にオフサイドポジションにいなければ、その後どこに移動してもオフサイドにはなりません。
反対に、パスが出された瞬間にオフサイドポジションにいた場合、その後オンサイドポジションに戻ってボールを受けたとしてもオフサイドと判定されます。
この「瞬間」を捉えることが、プレイヤーにとっても、審判にとっても、観客にとっても難しい点です。特にプレースピードが速い試合では、肉眼でこの瞬間を正確に判断するのは至難の業といえます。
2-3. ボールより前方にいる状態の定義
オフサイドの判定では「ボールより前方にいる」という状態の正確な理解が必要です。前方とは単にゴールに近いということではなく、以下の条件を満たす状態を指します。
- 攻撃側の選手が味方からパスを受ける際
- パスが出された瞬間に
- 相手ゴールラインに近い位置にいる(ボールより前方)
ただし、ボールと同じライン上にいる場合はオフサイドではありません。同一ライン上にいる場合は「オンサイド」となります。
2-4. オフサイドになる具体的な位置関係(図解)
オフサイドになる典型的なケースを図解で説明します。

- 青チームの選手Aがボールを持っている
- 青チームの選手Bが、赤チームの最終守備者(後方から2人目の選手)より前方にいる
- 選手Aが選手Bにパスを出した瞬間、選手Bはオフサイドポジションにいる
- 選手Bがそのパスを受けるとオフサイドの反則となる
この場合、審判は笛を吹いてプレーを止め、守備側チームの間接フリーキックが与えられます。
重要なのは、攻撃側の選手が実際にボールに触れなくても、オフサイドポジションにいることでプレーに影響を与えた場合(守備側の選手の視界を遮るなど)もオフサイドと判定されることがあります。
2-5. オフサイドにならない位置関係(図解)
オフサイドにならないケースも確認しておきましょう

- 青チームの選手Aがボールを持っている
- 青チームの選手Bは、赤チームの最終守備者と同じライン上、またはそれより後方にいる
- 選手Aが選手Bにパスを出してもオフサイドにはならない
また、以下のケースでもオフサイドにはなりません:
- 選手が自分のハーフ内(ハーフウェーラインより自陣側)にいる場合
- ゴールキック、コーナーキック、スローインから直接ボールを受ける場合
- 相手選手からのパスやクリアなど、最後に触れたのが相手選手の場合(意図的なプレーであること)
2-6. 実際の試合映像で見るオフサイド判定
実際の試合では、選手たちは常に動き回っているため、オフサイドラインは常に変動しています。特に攻撃側のフォワード(FW)と守備側のディフェンダー(DF)は、わずか数センチの差を争うことも多いです。
試合では、サイドのタッチライン沿いを走るラインズマン(副審)がこのオフサイドラインを常に確認しています。ラインズマンの位置がオフサイドラインを示すため、試合観戦の際はラインズマンの動きにも注目してみると良いでしょう。
プロの試合では、1つのオフサイド判定が試合の明暗を分けることもあるのです。
3. 知っておくと差がつく!オフサイドにならない5つの特殊状況
オフサイドのルールには例外も多く、理解が難しいポイントでもあります。知っておくと観戦がより楽しくなる特殊な状況を見ていきましょう。
3-1. ゴールキック・コーナーキック・スローインからの直接プレー
以下のケースでは、選手がオフサイドポジションにいても反則とはなりません
- ゴールキック:ゴールキックから直接パスを受ける場合
- コーナーキック:コーナーキックから直接パスを受ける場合
- スローイン:スローインから直接パスを受ける場合
これらのセットプレーの場合、ボールが他の選手に触れるまでは、どこにいてもオフサイドにはなりません。この知識があれば、「なぜあのプレーはオフサイドにならなかったのか?」という疑問が解消されるでしょう。
3-2. 自陣内(ハーフウェーライン以内)でのプレー
選手が自分のハーフ内(ハーフウェーラインより自陣側)にいる場合は、いかなる場合もオフサイドにはなりません。
これにより、ディフェンスがオフサイドトラップを仕掛ける際も、攻撃側が自陣内から抜け出すカウンター攻撃を行う場合も、オフサイドを気にせずプレーできます。ハーフウェーラインはオフサイドの判定において重要な基準線となります。
3-3. 相手選手からのラストタッチ(意図的なプレー)
相手選手が意図的にプレーしたボール(パスやクリア)を受けた場合、オフサイドポジションにいてもオフサイドの反則とはなりません。ただし、「意図的なプレー」かどうかの判断が重要です.。 例えば:
- 相手DFが意図的にボールをクリアしようとしたが、不完全なクリアになった場合
- 相手GKがシュートをはじいて、そのリバウンドをオフサイドポジションにいた選手が拾った場合
「意図的なプレー」と「反射的な反応」の違いは微妙で、審判の判断に委ねられます。2021年のルール改定では、この「意図的なプレー」の定義がより明確になりました。
3-4. 体のどの部分がオフサイド判定の対象になるのか
オフサイド判定において対象となるのは、「ボールを合法的にプレーできる体の部位」です。具体的には
- 対象となる部位:頭、胴体、足
- 対象とならない部位:手、腕(脇の下から指先まで)
例えば、選手の手や腕だけがオフサイドラインよりも前に出ている場合はオフサイドとはなりません。2022年カタールワールドカップ決勝で、メッシの得点シーンでもこの判断が適用されました。
3-5. アクティブプレー(プレーへの関与)の解釈
オフサイドポジションにいるだけでは反則にならず、実際にプレーに「関与」することで初めてオフサイドの反則となります。プレーへの関与は以下のように定義されます。
- ボールを触れる又はボールを触れようとする意志がある
- 相手プレーヤーの視界を遮る
- 相手プレーヤーのボールへのアクセスを妨げる
- 明らかなアクションで相手プレーヤーのプレーに影響を与える
このルールにより、オフサイドポジションにいても実際にプレーに関与しない場合は、プレーが続行されることがあります。特に攻撃側が複数の選手で攻め込む場合、どの選手がプレーに関与しているかの判断が重要になります。
4. よくある誤解と疑問を徹底解決!オフサイドQ&A
オフサイドに関するよくある疑問や誤解を解消しましょう!これできっとオフサイドの知識が深まります!
Q1. 「ボールに関与していない」とはどういう状態か
「ボールに関与していない」状態とは、以下のような場合を指します。
- オフサイドポジションにいるが、ボールに触れていない
- 守備側選手のプレーを妨げていない
- 相手の視界を遮ったり、動きを制限していない
例えば、ピッチの反対側でプレーが行われている時に、オフサイドポジションに立っているだけの選手は「関与していない」と判断されることが多いです。
ただし、近年は「間接的な影響」も考慮されるようになっています。守備側選手の判断や動きに影響を与えたと思われる場合は、「関与あり」と判断されることもあります。
Q2. 同一ライン上にいる場合はオフサイドになるのか
攻撃側選手が守備側の後方から2人目の選手と同一ライン上にいる場合、オフサイドにはなりません。 これは「同じライン上ならオンサイド」というルールです。
「同一ライン上」の判断は非常に難しく、数センチの差が判定を左右します。現代のVARシステムでは、選手の体のどの部分が最も前に出ているかを分析し、厳密な判定が行われています。
Q3. 手や腕はオフサイド判定に影響するのか
オフサイド判定において、手や腕は考慮されません。これは、サッカーではハンドボールが禁止されているため、手や腕でボールを合法的にプレーできないからです。
オフサイド判定で考慮されるのは、以下の体の部位です。
- 頭
- 胴体
- 足
「手や腕」の定義は、「肩の先端から指先まで」とされ、脇の下から始まる部分とされています。肩はオフサイド判定の対象になりますが、その先の腕や手は対象外です。
Q4. ゴールキーパーが前に出た場合の最終ラインはどのようになるのか?
通常、守備側の最終ラインは「後方から2人目の選手」の位置ですが、ゴールキーパー(GK)が前に出た場合はどうなるのでしょうか。
基本的には「後方から2人目の選手」という原則は変わりません。
例えば、
- GKが前に出て、1人のDFがゴール前に残っている場合、そのDFの位置が最終ラインとなる
- コーナーキックなどでGKも含め全員が前に出た場合、後方から2人目の選手(通常はDF)の位置が最終ラインとなる
GKも「フィールドプレーヤー」として扱われるため、後方から2人目という原則は常に適用されます。
Q5. GKがセーブして弾いたリバウンドボールはオフサイドになるのか?
シュートがGKにセーブされた後のリバウンドボールを、オフサイドポジションにいた選手が拾った場合はどうなるのでしょうか。
基本的なルール
- GKによる意図的なセーブ後のリバウンドを拾った場合→オフサイド
- GKの意図的なプレー(パスやクリア)をミスして拾った場合→オフサイドにならない
ここでも「意図的なプレー」と「セーブ」の違いが重要です。「意図的なプレー」とは選手がボールの方向やスピードをコントロールしようとする行為であり、単なる反射的なセーブやブロックとは区別されます。
5. 初心者でもわかる!オフサイドのまとめと覚え方のコツ
最後に、オフサイドルールを効率よく覚えるコツをお伝えします。
5-1. 覚えておくべき3つの基本原則
オフサイドの複雑なルールを3つの基本原則にまとめました。
1.ポジション原則: 攻撃側選手が相手チームの2番目に後ろの選手(通常はディフェンダー)より前にいる場合、オフサイドポジションにある
2.タイミング原則: 味方選手がボールを蹴った瞬間の位置で判定される(ボールを受け取った時点ではない)
3.関与原則: オフサイドポジションにいても、実際にプレーに関与していなければ反則にならない
5-2. 実戦での見極めポイント
試合を観戦する際は、以下のポイントに注目してオフサイドを理解しましょう。
- ラストパスの瞬間を見る: パサーがボールを出す瞬間を見逃さない
- ディフェンスラインに注目: 相手チームの最後尾から2番目の選手の位置を意識
- ボールより前にいる攻撃選手をチェック: パサーがボールを蹴る瞬間に、受け手の位置を確認する
5-3. よくある勘違いを避けるために
オフサイドでよくある誤解を整理しておきます
✓ 正解: 相手チームの後ろから2番目の選手より前にいる場合がオフサイド
✓ 正解: パスが出された瞬間の位置で判定
✗ 間違い: ボールを受け取った時の位置で判定
✗ 間違い: ゴールキーパーより前にいたらオフサイド
6. まとめ
オフサイドルールを理解することで、サッカー観戦の楽しみは格段に広がります。審判の判定に一喜一憂するだけでなく、選手の駆け引きの動きも見えてくるでしょう。
オフサイドの戦術的な面白さを発見
- オフサイドトラップ: ディフェンス陣が連携してオフサイドを誘発する戦術
- 裏への飛び出し: 絶妙なタイミングでディフェンスラインを突破する攻撃
- ポジショニングの駆け引き: オフサイドにならないよう計算された選手の位置取り
ルールをより深く理解する
基本的なオフサイドルールをマスターしたら、さらに細かなルールや例外についても学んでみましょう。FIFA(国際サッカー連盟)の公式ルールブックには、より詳細な規定が記載されています。
オフサイドルールは一見複雑に見えますが、基本原則を理解すれば必ず理解できます。次回サッカーを観戦する際は、ぜひ今回学んだポイントを意識してみてください。きっと新しい発見があるはずです!